社団法人中央区医師会の活動
(事業報告から抜粋)
 
 平成17年度18年度19年度20年度21年度22年度23年度
 

平成17年度
  • この一年間、政界は医療界を巻き込んで激動的な方向へ突き進んだ。5年目を迎えた小泉政権は国会を小泉劇場と化して国民の支持を集め、聖域なき構造改革と称して既存の仕組みを壊し、道路公団民営化を含む様々な政策を断行してきた。そして、いよいよ、その本丸である郵政民営化関連法案を衆議院の解散総選挙を巧みに利用して国会で成立させた。次に強く懸念されたのが医療制度を含む社会保障制度の専横的な改革であった。特に国民医療費については公費負担の規模を削減させる方針であり、言うまでもなく、受診者の立場から見れば一層の医療費負担増となる。これは即ち、弱者切り捨ての改革と言っても過言ではない。また、今回の診療報酬改定における3.16%の引き下げは、一見、患者の医療費負担減と映るが、現場の疲弊による診断・治療の遅れを招き、結果的に患者自身の負担増に繋がることは目に見えている。平行して進められている医療制度改革は現場の実情にそぐわず、療養病床の削減など医療の質の低下が強く危倶される。当医師会は公益法人としてこれらの状況を座視する事は出来ない。
     平成16年度の混合診療導入反対運動に引き続き、17年度は国
    民皆保険制度堅持の署名運動に1,700万人を越える署名が全国から集まり、また、12月に日比谷公会堂で開催された「国民皆保険制度を守る国民集会」では2,000名もの国民が参集し、当医師会からも多数の会員が賛同し参加した。我々は医療・介護の現場崩壊阻止にこれからも公益法人の一員として充分に活動して行かなければならない。
     この厳しい医療状況の中で、我が中央区医師会は2年目を迎えた松本会長が融和の精神を尊びながら積極的な指導を行い、その結果すべての会員が一致団結し、以下の事業を遂行したので報告する。
      
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     住民に良質な医療を提供するために、常に発展し続ける医学・医療を研鑽する会員の意欲に応えて、定期学術講演会を9回、臨床画像検討会を12回、京橋薬剤師会との合同講演会を1回開催
    した。国立がんセンター中央病院にて専門医による学術講演会を1回開催し、同院木曜読影会にも参加した。また、聖路加国際病院との合同カンファレンスを4回共催し、同院救急部の協力による救急蘇生法、並びに自動体外式除細動器(AED)を使用した実地訓練を行い、多数の会員が参加した。更に今年度から始まった新臨床研修医制度にも多数の医療機関が協力した。
     
    日医生涯教育制度の受講申告率は97%に達し、同制度の発展を通じて当会員の生涯学習に大きく寄与した。


    2.公衆衛生に関する事項
     公衆衛生事業に関しては、区民健康診査、各種がん検診(肺・胃・大腸・子宮・乳腺・前立腺)及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査が実施され、区民の健康維持に多大に貢献した。特に、肺がん検診、胃がん検診では国立がんセンター中央病院、聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を毎月開催し、診断精度のより一層の向上に努めた。今年度の読影率は胃がん検診94%、肺がん検診92%であり前年度と同様に高率を維持する事ができた。
     各種予
    防接種事業も例年通りほぼ順調に行われたが、副作用が問題視された事による日本脳炎ワクチンの積極的接種の突然の自粛を余儀なくされた事、MRワクチンヘの移行に伴い風しんワクチンの不足を生じ接種制限が発生した事は残念であった。しかし今年度、予防接種が無事終了し得たのは会員各位の努力の賜物である。
     6年目を迎えた生活習慣改善指導事業は次第に成果を上げているが、今後、より一層の定着が期待される。
     更に中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所結核診査協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。


    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届けるために、学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断、保育園では週1回の定期健康診断を行った。また、各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者、教師を対象にした児童、生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。

    4.地域医療に関する事項
     今年度から中央区が聖路加国際病院の協力のもとで始めた中央区平日準夜間小児初期救急医療事業においては、当医師会の小児科専門医3名の献身的な参加により順調にスタートし、地域の小児救急医療に対し大いに貢献した。
     予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処するため、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医の再編成を行った。また、広域大規模災害訓練などの各種防災訓練に積極的に参加した。
     毎年8月に開催されている東
    京湾大華火まつりの救護活動も会員各位の多大なる協力により順調に行われた。
     当地域で特に重要な問題である産業医活動については、講演会と実地研修会を開催し、多数の会員が参加した。また、中央地域産業保健センター活動にも協力した。
     地域医療の健全な遂行に寄与するため、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。


    5.社会保障医療に関する事項
     例年通り、管外保険講習会を10月22日に開催し、会員、事務局、休日応急診療所、訪問看護ステーション、介護老人保健施設の職員、計67名が参加した。亀田総合病院の岩田健太郎先生による米国医療に関しての有益な講演も行われた。
     健康福祉まつり2005においては、医師会活動をまとめたパンフレットを1,000部配布し、区民に医師会活動の内容を周知するとともに、医師会コーナーでは延べ340名を越える参加者に対し、医療・介護保険や訪問看護の仕組みにつき判り易く説明した。健康相談会では各科専門の会員による健康相談を行い、かかりつけ医マップ、各種疾患パンフレットを配布し、禁煙の啓発などを行い、区民のニーズに充分に応える事ができた。
     福祉センター事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業も、会員各位の惜しみない協力のもと順調に遂行された。
     福祉関連事業として長年続けてきた在宅難病患者訪問診療事業、福祉センター健診事業にも引き続き協力し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホームおよび高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」と「マイホーム新川」への保健・医療協力が順調に行われた。
     今年度、当医師会主催による市民公開講座を開催し、多数の住民の出席を得て、健康維持に対する多大なる関心に応えるべき重責を充分に果した。その他、計4回の市民公開講座の後援を行った。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     医療情報関係においては、当医師会内外の様々な医療系メーリングリストや、行政及び医学・医療系諸団体のホームページ等を通じて幅広く医事衛生に関する調査研究を行い、随時、会員への速やかな伝達を図った。

    7.休日応急診療所に関する事項
     地域医療の中で重要な役割を果している休日応急診療所は会員各位の積極的な協力により佃と京橋の2ヶ所で初期救急医療としての責務を充分に果した。特に佃診療所は内科系医師全員出務が義務である事を再確認し、より一層社会に貢献した。

    8.会誌・出版等に関する事項
     区医雑誌の発刊は19刊号となり、日常診療に大変役立つ貴重な学術論文10編を筆頭に、会員活動、随筆、俳句、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載し、前刊以上に充実した内容の雑誌となった。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     8年目を迎えた自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」は、会員各位の協力と職員の並々ならぬ努力と忍耐力により地域に確実に定着した。ケアプラン作成は月平均130件、訪問看護件数は月平均840件となり、区民への在宅サービスに大きく貢献した。

    10.介護老人保健施設に関する事項
     当医師会運営の介護老人保健施設「リハポート明石」は開設2年目を迎え全面稼動するに至り、全職員の奉仕の精神と介護に対する前向きな取組みが徹底され、利用者の反応は大変好評であり、入所者数が増加した。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     4月に導入された個人情報保護法は我々が医療を行う上でとりわけ重大な事項である。医療現場ではかなりの戸惑いがあったが、当医師会は会員、従業員を対象に個人情報保護法講習会を開催するなど、速やかに対応した。
     同時期に全面解禁となった銀行預金ペイオフ制度に速やかに対応するとともに、ITコンサルタントの協力を得て医師会事務局のIT環境整備と技術の向上を図った。
     区民からの要望に応えてかかりつけ医の紹介や、医療の諸問題への対応も積極的に行った。
     昨年度と同様に、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、安全な医療の推進を図った。

     慶事として、文化勲章を日野原重明君、東京都知事表彰(保健衛生功労者)を前田立雄君、東京都知事感謝状(救急医療関係功労者)を宮崎舜賢君、東京都教育委員会表彰(学校保健功労者)を岡添哲夫君、中央区長表彰状(教育功労者)を岩佐英之君、同じく中央区長表彰状(衛生事業功労者)を根本ハルさん、東京都国税局表彰状をを武田宏君、東京都中央区都税事務所長感謝状を葉田野雅夫君、京橋税務署長感謝状を隈部時雄君並びに宮崎舜賢君、京橋青色申告会長感謝状を市川尚一君が受賞した。
     一方、不幸にして青木正雄君が逝去された事は誠に痛恨に絶えず、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福を申し上げる。
     今年度新たにA会員9名、B会員9名、B2会員5名、合計23名の会員を迎え、総会員数249名を数える医師会となった。
     今年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。

平成18年度
  • 全国の医療現場を直撃した報道「県立病院産婦人科医逮捕」の余波が続く中、かつて無い診療報酬の大幅マイナス改訂と、政権政党との対話を重視する唐澤日医会長誕生で18年度が始まった。米国同様、我が国でも急速な「ワーキングプア」拡大が懸念され、社会保障をより充実させるべきこの時期に、小泉内閣は社会保障費の増加が国家財政悪化を招くとして「骨太の方針2006」を打ち出し、短兵急な医療費削減を医療費適正化と言い換えて、「健康保険法等の一部を改正する法律」及び「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律」を成立させた。
     日医新執行部の努力も報われぬまま、9月に誕生した安倍内閣もこれら日本の医療・社会保障の根幹を揺るがすような法改悪を見直すこと無く安易に踏襲し、その結果、今や現場は「立ち去り型サボタージュ」から医療崩壊、そして「一将功成って万骨枯る」の社会保障崩壊の危機的状況にある。
     地域の医療は地域で守る・・・公益法人として伝統ある我々中央区医師会としては、創立60周年を迎える19年度からの第5次医療法改正施行を念頭に、各科の会員が夫々の立場から共通のテーマを論じあうシンポジウムや、専門家を招いての医療安全講習会を複数回開催するなど、地域の為により速やかで安全な医療連携体制の構築に取り組んだ。更には20年度以降の諸改革にも対応すべく、松本会長の包容力豊かな指導の下、すべての会員が一致団結し、18年度に遂行した各事業を報告する。
    •    
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学・医療を研鑽し、良質な医療を提供したいとの会員の強い要望に応えて、学術講演会を6回、臨床画像検討会を12回、日本橋医師会・京橋薬剤師会との合同講演会を夫々1回開催した。また、国立がんセンター中央病院にて専門医による学術講演会を1回開催し、同院木曜読影会及びメディカル・カンファレンスにも参加した。更に、聖路加国際病院との合同カンファレンスを4回共催し、救命救急の実地訓練も実施した。これらにより日医生涯教育制度の受講申告率は99%に達し、同制度の発展を通じて当会員の生涯学習に大きく寄与した。
     一方、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加、優秀な研修医26名の地域医療研修を指導した。

    2.公衆衛生に関する事項
     区の委託により68医療機関で12,622名の区民に対して区民健康診査を実施した。また、各種がん検診(肺・胃・大腸・子宮・乳腺・前立腺)及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。特に肺がん検診、胃がん検診では国立がんセンター中央病院、聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々26回、32回開催し、より一層の診断精度向上に努めた。尚、今年度の読影率も、夫々93%、98%と例年同様の高率となった。
     定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に行われ、延接種実施人数は13,950名に達した。
     6年目を迎えた生活習慣改善指導事業も、来るべき特定健診・保健指導事業を念頭に粛々と実施した。
     更に中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所結核診査協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の11の保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、3つの高等学校に延べ91名の会員が園医・校医として協力し、学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断、保育園では週1回の定期健康診断を行った。また、各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者、教師を対象にした児童、生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     茨城県での麻疹流行を受けて速やかな情報収集を図ると共に、区関係部署へ麻疹の説明文及び対応マニュアルを送付した。

    4.地域医療に関する事項
     初めての試みとして、会員の会員による区民の為の会員向けシンポジウムを2回開催した(第1回:現代のうつ病をめぐって、第2回:かかりつけ医とアレルギー)。各科会員同士が忌憚無く互いの知識・経験を披露し合い、より幅広い医療・医学的連携を深めたことで、区民により安心な医療体制を提供する為の大きな一歩となった。
     区の中央区平日準夜間小児初期救急医療事業には、当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、地域の小児救急医療に対し貢献した。
     予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処するため、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加し、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医を見直した(昼間83名、夜間28名の会員が22箇所の救護所等へ出動)。また、雷雨で順延となった東京湾大華火祭には61万人もの観客が集まったが、救護所3ヶ所での救護活動は会員・職員14名及び聖路加国際病院の協力を得て順調に行われた。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域では産業医同士の情報交換も活発で、当医師会が主催した講演会と実地研修会には併せて715名もの医師会員が参加した。また、中央地域産業保健センター活動にも協力した。
     区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区内の国立がんセンター中央病院、聖路加国際病院のみならず、区外の済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、慈恵医科大学附属病院等との連携も深めた。
     地域医療の健全な遂行に寄与するため、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。

    5.社会保障医療に関する事項
     初めての試みとして京橋・月島地域の民生(児童)委員と当医師会の懇談会を開催し、当医師会及び受託運営している「リハポート明石」、「京橋おとしより相談センター」の活動等を紹介すると共に、夫々の代表者計18名が今後の連携について協議した。
     健康福祉まつり2006においては、医師会活動をまとめたパンフレットを2,000部配布し、区民に医師会活動の内容や医療・介護保険や訪問看護の仕組みにつき判り易く説明した。健康相談会では各科専門の会員による健康相談や禁煙の啓発などを行い、区民107名から相談があった。
     福祉関連事業として長年続けてきた在宅難病患者訪問診療事業、福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業などに引き続き協力し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホームおよび高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」と「マイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行った。
     国立がんセンター中央病院から講師を招いて市民公開講座「乳がんが心配なあなたに」を主催すると共に市民公開講座の後援を1回行い、区民の関心に応えるべき重責を果した。
     要介護度の区分変更等を含む18年度介護保険制度改訂の詳細につき、開業医のみならず勤務医を対象とした主治医研修会も開催して周知徹底を図った。また例年同様、会員・職員13名が分担して計134回開催された中央区介護認定審査会へ出席し、年間4,104件
    (累計29,650件)もの審査を適正に行った。
     毎月レセプト整備会を開催し、24名の委員が年間総数
    835,616枚(*1)にも及ぶレセプトにつき、マスコミに「不正請求」と誤って報道される病名記載漏れ等の不備をチェックした。また、毎年開催している管外保険講習会には会員及び職員の計70名が参加し、保険制度の正しい運用につき研修した。この際、日本医師会前常任理事の野中博先生による講演「今後の医療のあり方について」が行われた。(*1:社保分520,730枚、国保分314,886枚)

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     朝令暮改の諸制度改訂に速やかに対応し、区民・会員へ適切な医療を提供すべく、医療情報関連の諸会議に積極的に参加すると共に、様々な医療系メーリングリスト(ML)や、行政及び医学・医療系諸団体のホームページ(HP)等を通じて幅広く医事衛生に関する調査研究を行った。更に当医師会内の各MLを活用して得た情報を多方面から検討・整理し、随時、速やかに会員へ、区民へ、適切な情報を提供した。
     来るべき電子的情報伝達義務化に備えて、パソコンのセキュリティや電子カルテについての講演会を開催し、医事衛生を底支えする当会員・職員の知識習得に努めた。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は20周年を迎えた。18年度も佃と京橋の同診療所には、延人数で243名の会員が出動して3,667名の住民へ対応し、初期救急医療としての責務を果した。特に佃の同診療所は内科系会員全員で支え、今後も区民の健康を総合的観点から協力して診ていくことを再確認した。

    8.会誌・出版等に関する事項
     例年同様、理事会報告等を掲載した医師会会報を13回、様々な最新情報を掲載した同区医ニュースを12回発行した。
     中央区医師会雑誌20刊号を発刊した。貴重な学術論文11編を筆頭に、会員活動、随筆、俳句、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載し、日常診療に役立つ情報のみならず、当医師会の活動を幅広く広報するものとして、今年度も更新した当医師会会員名簿と同様、区内各関連部署にも配布した。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     9年目を迎えた自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」では、介護保険制度の改定に伴い、要支援の予防給付に対して新たに予防訪問看護の訪問を、「お年寄り相談センター」と委託契約を結び介護予防給付のケアマネージメント事業を開始した。ケアプラン作成の総数は1,216件、訪問看護回数総計は9,973回に及び、区民への在宅サービスに大きく貢献した。また、データ漏洩をより確実に防止する為、同ステーションのITセキュリティの見直しを行った。

    10.介護老人保健施設に関する事項
     区から受託運営している介護老人保健施設「リハポート明石」の18年度の延べ入所者数は680名(ショートステイを含む)であった。職員配置の充実などにより、施設内事故件数は対前年比26%減少し、行政に報告義務のある重大事故は皆無であった。開設3年目を迎え、区民の利用状況や要望、問題点等をほぼ把握するに至り、今後のより良い運営に向けて区と折衝を重ねた。
     「京橋お年より相談センター」だけでなく「月島おとしより相談センター」との速やかな連携にも尽力した。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     当医師会には中央区や日本医師会等から年間、2,041通の書類が届いたが、人の和を重視する松本会長のもと、総務連絡会を55回、理事会を14回
    (印刷後13→14回訂正)開催し、夫々8名、23名の出席者が、563件、152件の案件を活発に協議し、公益法人として適切なる対応を講じた。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、安全な医療の推進を図ると共に、区民の要望によるかかりつけ医紹介を15件、他、苦情相談10件にも速やかに対応した。更に「医師逮捕・起訴」報道が会員・職員へ与えた衝撃の大きさを重視し、医療安全に関する各方面の専門家を招き、医療安全講習会を4回開催して医療事象・事故への適切な対応の習得に努めた。
     六師会や合同講演会を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めた。また、日本橋医師会と共に2回開催された中央区保健医療福祉連絡協議会に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行った。
     来るべき諸制度改正に速やかに対応すべく、ITコンサルタントと共に医師会事務局業務の見直しを行う一方、顧問社会保険労務士の協力を得て医師会運営体制の見直しを図った。

     慶事として、東京都医師会学校医会表彰(特別功労者)を前田立雄君、中央区長表彰状衛生事業功労者)を吉岡隆君、東京都中央区都税事務所長感謝状を松本章一君、京橋税務署長感謝状(納税法施行55周年記念)を葉田野雅夫君が受賞した。東京都医師会在任10年医道審議委員で菊岡豊二君、同生活習慣改善指導推進事業検討委員で松本章一君、同救急委員で宮崎舜賢君、編集委員で葉田野雅夫君が表彰され、東京都教育委員会表彰(功労者)を佐久間壽君、大築淳一君が受賞した。
     一方、不幸にして島峰達二君、宮崎舜治君、野田喜代一君、飯島ふみ子君、森川昭彦君、田中栢君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     今年度新たにA会員10名、B会員7名、B2会員5名、功労会員2名 合計24名の会員を迎え、総会員数252名を数える医師会となった。
     今年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。

平成19年度
  •  平成19年度、中央区医師会は創立60周年を迎えた。歴代会長はじめ先輩諸氏の弛まぬ地道な努力により、現在、我々が夫々の地域で、自らの診療と医師会を通しての地域活動に関与できる体制が築かれていることに、改めて感謝を申し上げたい。11月の創立60周年記念行事も成功裏に開催され、公益法人中央区医師会として、次なる10年に向け更に地域の医療・介護・保健・福祉に幅広く貢献すべく、決意を新たにした。
     「聖域なき構造改革」、「抵抗勢力」、「刺客」など、判り易い言葉に象徴される小泉・安倍政権は「医療費削減」に固執し、絶対的医師不足の中、我が国の医療体制を辛うじて支えてきた医療現場の使命感を軽視した。その結果、相対的医師不足が一気に加速し、地域の医療は崩壊寸前にまで追い込まれたが、昨今の各種報道等により、現場の窮状が詳らかにされ、徐々に改善を要求する動きのあることは医療現場にとって一縷の光明として歓迎されるべきであろう。
     こうした状況の中、「人の和」を掲げる松本会長以下、当会会員は、第五次医療法改正を踏まえ、情報公開、医療連携、医療安全等の推進に粛々と尽力すると共に、医療法人制度改革にも前向きに取り組んだ。会内外から様々な声を広聴し、式典や年史を通じて我々の過去、現在、そして未来のあるべき姿を広報する一方、強引拙速な特定健診・保健指導導入に対しては、他に誇れる当区の健診・検診を維持すべく、「区民は平等」をスローガンに奔走した。また、新型インフルエンザや大震災など、予想される天災にも、精力的に対応を図った。しかし、今だ充分とはいえず、区民、区行政、他医師会等とも連携を密にし、我々の地域医療、そして世界に冠たる日本の医療制度、医療体制を更に進歩発展させて行く覚悟である。今後の中央区医師会活動の更なる充実を期し、平成19年度の事業を総括し報告する。
      
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学、医療を研鑽し、良質な医療を在住者・在勤者へ提供する為、臨床画像検討会を12回、中央区医師会糖尿病シンポジウムを1回、日本橋医師会、京橋薬剤師会との合同講演会を夫
    々1回し、当会独自の学術講演会を2回開催した。また、中央区医師会創立60周年を記念して学術集談会を開催、会員10名が夫々の専門分野の興味深い講演を行い、活発な質疑応答があった(45名出席)。更に国立がんセンター中央病院にて専門医による学術講演会を1回開催し、同院木曜読影会及びメディカルカンファレンスにも参加した。一方、聖路加国際病院との合同カンファレンスを4回共催し、AED講習会等も実施した。これらにより日医生涯教育制度の受講申告率は99.6%に達し、同制度の発展を通じて当会員の生涯学習に大きく寄与した。
     一方、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加、優秀な研修医
    25名の地域医療研修を指導した。

    2.公衆衛生に関する事項
     区の委託により
    72医療機関で12,948名の区民に対して区民健康診査を実施した。また、各種がん検診(肺、胃、大腸、子宮、乳腺、前立腺)、眼科検診及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。特に肺がん検診、胃がん検診では国立がんセンター中央病院、聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々26回、32回開催し、より一層の診断精度向上に努めた。尚、今年度の読影率も、夫々96%、98.7%と例年同様の高率となった。
     中央区保健医療福祉計画推進委員会及び同食育専門部会、健康中央21推進委員会等へ参加する一方7年目を迎えた生活習慣改善指導事業を粛々と実施しつつ、次年度からの特定健診・特定保健指導実施へ向けて区行政及び日本橋医師会と協議を重ねた。
     定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に行われ、延接種実施人数は15,339名に達した。
     更に東京都ウィルス肝炎診療ネットワーク事業による地域肝炎連絡会議開催にも協力する一方、中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所感染症の診査に関する協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の11の保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、1つの高等学校に延べ
    91名の会員が園医、校医として協力し、学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断、保育園では週1回の定期健康診断を行った。また、各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者、教師を対象にした児童、生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     一方、都内での麻疹流行を受けて再度、会員へ修飾麻疹等について注意喚起を徹底した。

    4.地域医療に関する事項
     中央区平日準夜間小児初期救急医療事業には当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、月島及び京橋の中央区病後児保育実施医療機関としても夫々協力し、地域の小児救急医療に対し貢献した。
     区の新型インフルエンザ対応実施訓練に参加する等、新型インフルエンザ対策行動計画へも協力した。また、予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処するため、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加し、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医を見直した(昼間83名、夜間28名の会員が22箇所の救護所等へ出動)。また、例年70万人を越す観客が集まる東京湾大華火祭の救護所3ヶ所には、聖路加国際病院の協力を得て会員及び職員14名が出動し、速やかに救護活動を行った。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域では産業医同士の情報交換も活発に行われ、当医師会が主催した講演会と実地研修会には併せて743名もの参加者があった。また、中央地域産業保健センター活動にも協力した。
     区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区内の国立がんセン
    ター中央病院、聖路加国際病院のみならず、区外の東京都済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、慈恵医科大学附属病院等との連携も深めた。また、中央ブロック脳卒中医療連携学術講演会や糖尿病医療連携講演会等に参加して医療連携クリニカルパスにつき他地区医師会と協議する一方、独自の同クリニカルパス作成も模索した。
     地域医療の健全な遂行に寄与するため、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。


    5.社会保障医療に関する事項
     京橋・月島地域の民生児童委員と当医師会の懇談会を開催し、当医師会及び受託運営している「リハポート明石」、「京橋おとしより相談センター」の活動等を紹介すると共に、夫々の代表者計
    21名が今後の連携について協議した。
     健康福祉まつり2007においては、医師会活動をまとめたパンフレットを配布すると共に、区民に医師会活動の内容や医療・介護保険や訪問看護の仕組みにつき判り易く説明した。健康相談会では各科専門の会員による健康相談や禁煙の啓発などを行い、区民76名から相談があった。
     福祉関連事業として長年続けてきた在宅難病患者訪問診療事業、福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業などに引き続き協力すると共に中央区地域自立支援協議会にも参加し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホームおよび高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」と「マイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行った。
     国立がんセンター中央病院と共催でがんについての市民公開講座を3回開催し、区民の関心に応えるべき重責を果した。
     開業医のみならず勤務医を対象とした主治医研修会も開催して介護保険制度の更なる周知を図る一方、認知症への対応力の向上を図るための研修会も開催した。一方、ケアマネージャーと主治医の懇談会も7回目を迎え、区内のケアマネージャー46名及び医科歯科会員42名を含む97名が参加、様々な課題につき協議した。
     また例年同様、会員、職員13名が分担して計
    140回開催された中央区介護認定審査会へ出席し、年間3,940件の審査を適正に行った。
     毎月レセプト整備会を開催し、23名の委員が年間総数830,441枚(社保分523,469枚、国保分306,432枚、介護保険分540枚)にも及ぶレセプトにつき、病名記載漏れ等の不備をチェックした。また、毎年開催している管外保険講習会には会員及び職員の計58名が参加し、保険制度の正しい運用及び来るべき特定健診・保健指導につき研修した。この際、杏林大
    学法医学の佐藤喜宣教授による「臨床法医学と虐待症候群」の講演があった。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     東京都医師会医療廃棄物適正処理推進協議会が進めている医療廃棄物適正処理推進事業の説明会を開催し、同事業の推進に協力した。
     朝令暮改の諸制度改訂に速やかに対応すべく、医療情報関連の諸会議に積極的に参加すると共に、様々な医療系メーリングリスト(ML)や、行政及び医学、医療系諸団体のホームページ(HP)等を通じて幅広く医事衛生に関する調査研究を行い、当医師会内のMLやHPを活用して得た情報を多方面から検討、整理し、随時会員へ、区民へ、適切な情報を提供した。こうした取り組みを平成19年度日本医師会医療情報システム協議会のシンポジウムにて発表した。
     来るべきレセプト・オンライン請求義務化についての講演会を開催し、医事衛生を底支えする当会員、職員の知識習得に努めた。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は21周年を迎え、佃と京橋の同診療所には延人数で
    240名の会員が出動して2,578名の住民へ対応し、初期救急医療としての責務を果たした。また、データ漏洩をより確実に防止する為、両診療所のITセキュリティの見直しを行った。
     佃休日応急診療所薬局(京橋薬剤師会による院外薬局)設置へ向けて休日応急薬局設立準備委員会を設置し、中央区及び京橋薬剤師会と慎重に検討を重ね、10月6日(土)に開所した。

    8.会誌、出版等に関する事項
     例年同様、理事会報告等を掲載した会報を12回、様々な最新情報を掲載した区医ニュースを12回、貴重な学術論文11編を筆頭に、会員活動、随筆、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載した中央区医師会雑誌21刊号を発刊した。
     創立60周年を記念して「60年史」を発刊した。記念式典の様子をカラー写真で説明すると共に、最近10年間の各部、各地域部の活動報告等を収載し、当医師会の活動を幅広く広報するものとして、併せて発行した60周年記念かかりつけ医マップと共に区内各関連部署にも配布した。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     自主公益事業である
    「訪問看護ステーションあかし」は開設10年目を迎えた。ケアプラン作成の総数は952件、訪問看護回数総計は9,895回に及び、医師会員と共に区民への在宅サービスに大きく貢献した。また、データ漏洩をより確実に防止する為、同ステーションのITセキュリティの見直しを行った。

    10.介護老人保健施設等に関する事項
     区から受託運営している介護老人保健施設「リハポート明石」は開設4年目を迎え、区内外に新たな類似施設が出来るも、19年度の延べ入所者数は前年度とほぼ同数の679名(ショートステイを含む)を維持し、施設内事故件数を対前年比25%減少し得た。月2回開催されているリハポート明石利用調整委員会にも参加し、区民の利用状況や要望、問題点等をほぼ把握するに至り、「リハビリ等を通じた在宅復帰支援」という目標を達成すべく、更なる今後の運営改善につき、区とも折衝を重ねつつ鋭意努力した。
     同じく受託運営している「京橋おとしより相談センター」を軸に、「月島おとしより相談センター」や「日本橋おとしより相談センター」とも良好な連携を図った。


    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     当医師会には中央区や日本医師会等から年間2,010通の書類が届き、理事会を12回、総務連絡会を59回開催し、夫々23名、8名の出席者が、114件、530件の案件を活発に協議し、公益法人として適切なる対応を講じた。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、安全な医療の推進を図ると共に、区民の要望によるかかりつけ医紹介を10件、他、苦情相談9件にも速やかに対応した。また、医療安全講習会を2回開催すると共に、中央区保健所主催の医療安全講習会にも積極的に参加した。
     六師会や合同講演会を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めた。また、日本橋医師会と共に2回開催された中央区保健医療福祉連絡協議会に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行った。更に当医師会推薦の中央区議会の議員13名と懇談会を開催し、区行政全般につき活発な情報・意見交換を行った。
     医療法人制度改革による定款変更手続きの説明会を開催する一方、顧問社会保険労務士の協力を得て、医師会事務局、休日応急診療所及び訪問看護ステーションの実態聞き取り調査に基づき諸規定の作成に努めた。
     創立60周年記念式典では当医師会の沿革を紹介すると共に、日本の医療、そして都心の医療の厳しい現実を紹介し、推し進められる医療構造改革への当会の対応に理解を求めた。
     3月の定時総会では会長、副会長、理事夫々に定員を越える立候補があり、当医師会としては初めての投票による役員選挙となったが、人の和を掲げる松本会長のもと、選挙規定に則り粛々と選挙を実施し次期役員を決定した。

     慶事として、東京都知事表彰(税務功労者)を武田宏君、東京地方裁判所表彰(調停委員)を葉田野雅夫君、東京消防庁救急部長感謝状を松本章一君・宮崎舜賢君、中央区長表彰(衛生事業功労者)を仁木豊君、京橋税務署長表彰を松本章一君、東京都医師会学校医会表彰(永年勤続20年)を菊岡豊二君、国民健康保険中央会会長表彰を松本章一君、東京都医師国民健康保険組合高齢者表彰を菊岡豊二君、濱屋昌一君が受賞した。
     一方、
    不幸にして土坂登君、瀧花寿樹君、宮本次夫君、小高秀夫君、河合俊子君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     今年度新たにA会員2名、B会員8名、B2会員4名、合計14名の会員を迎え、総会員数253名を数える医師会となった。
     今年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。


平成20年度
  • 小泉内閣による「医療制度改革大綱」に基づき、福田内閣は第五次医療法改正を、安陪内閣は特定健診・特定保健指導事業、後期高齢者医療制度及び保険者の再編・統合を見直すことなく拙速に断行した。昨年度末、初めての投票による選挙で選出された本会執行部(理事会)も、これらに的確に対応すべく一致団結し、迅速に当会の組織改革に着手した。即ち、縦割りの弊害を除き透明性を高める為、業務が関連する部同士が横断的に連携する9つの委員会を新設した。また、業務急増の中、より公益性の高い会務に専念する為、全会員加入であった当会青色申告会及び同納税貯蓄組合を任意加入の独立した団体とし、同労働保険事務組合を解散した。更に事務長定年に伴い医師会事務長を初めて公募し、有能人材の新たな導入を図った。
     「はじめに医療費削減ありき」で編み出された特定健診は、判定基準の矛盾や公平性の欠如、事務手続きの煩雑さ等課題山積の侭に実施され、区民や受託医療機関には多大な負担を強いるものになった。しかし、現場の医療を支える関係各位の献身的な努力もあって、当会の健診実績は前年よりやや割り込んだものの、結果的にその低下は最小限に留まった。
     介護老人保健施設「リハポート明石」は区との契約5年目を迎え、第三者による厳格な実態評価を行い、その結果を踏まえて速やかな課題解決と職員研修を実施した。こうした真摯な姿勢が区議会等でも高く評価され、次年度以降も当会が同施設を受託運営することとなった。
     中央区の新型インフルエンザ対策では、佃休日応急診療所への発熱外来設置が提案された。当執行部も積極的に講演会や区の実地訓練に参加し、中央区危機管理メーリングリストを開設して幅広く情報・意見を共有した。その上で、殊に年末年始の対応を念頭に置き、同診療所における具体的なマニュアル作成・備品の確保等に取り組んだ。
     世界同時不況の中、現場から遊離した外来管理加算の5分間ルールは厳しい医業経営を直撃し、微量採血用穿刺器具を巡るマスコミ報道は現場の善意を踏み躙るものであったが、本会は4疾病5事業毎の医療連携体制構築やレセプトオンライン請求の義務化等に前向きに取り組むと共に、数々の事業を粛々と継続した。今後の中央区医師会活動の更なる充実を期し、平成20年度の事業を総括し報告する。
         
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学、医療を研鑽し、良質な医療を在住者・在勤者へ提供する為、臨床画像検討会を11回、中央区医師会糖尿病シンポジウムを1回、高齢者医療シンポジウムを1回、当会独自の学術講演会を3回開催した。更に国立がんセンター中央病院にて専門医による学術講演会を1回開催し、同院木曜読影会及びメディカルカンファレンスにも参加する一方、聖路加国際病院との合同カンファレンスを3回共催した。これらにより日医生涯教育制度の受講申告率は97.6%に達し、同制度の発展を通じて当会員の生涯学習に大きく寄与した。
     更に、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加すると共に、国立がんセンター中央病院と同センターレジデントの在宅医療研修プログラムへの次年度からの協力についても具体的な協議を始めた。

    2.公衆衛生に関する事項
     区と協力し、今年度より新しく始まったメタボリック症候群に的を絞った特定健康診査、特定保険指導を40〜75歳の区民5,185名に、75歳以上の区民2,567名に高齢者健康診査を実施した。更に次年度へ向けて内容の検討・帳票の見直しを行った。また、各種がん検診(肺、胃、大腸、子宮、乳腺、前立腺)、眼科検診及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。肺がん検診・胃がん検診では国立がんセンター中央病院及び聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々27回、32回開催し、より一層の診断精度向上に努めた。 
     定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に実施し、延接種人数は17,070名に達した。
     東京都医師会の委託による在宅難病患者訪問診療事業を、聖路加国際病院神経科の専門医、区障害者福祉課及び区保健センターの協力を得て、区内2
    名の患者に対し年4回の訪問及びケース検討会を実施し、難病患者を支援した。
     更に中央区保健医療福祉計画推進委員会及び同食育専門部会に参加するとともに、中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所感染症の診査に関する協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の12の認可保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、3つの高等学校に延べ92名の会員が園医、学校医として協力し、学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断を、認可保育園では週1回の定期健康診断を行なった。また、各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者、教師を対象にした児童、生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     一方、前年度、都内で麻疹が流行した為、MRワクチン、特にU期とV期、の接種を区民、学校、保育園等に周知徹底し、未然に流行を阻止した。
     新たな予防接種として、12月よりHibワクチンが認可され、ワクチンの供給量がわずかであったが区の補助制度も伴い開始した。また、平成21年4月に開始するBCG個別接種に対する準備を行い、会員を対象とした実地研修を行なった。

    4.地域医療に関する事項
     中央区平日準夜間小児初期救急医療事業には当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、月島及び京橋の中央区病後児保育実施医療機関としても夫々協力し、地域の小児救急医療に対し貢献した。
     区の新型インフルエンザ対応実施訓練に参加する等、新型インフルエンザ対策行動計画へも協力した。また、予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処する為、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加し、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医を見直した。また、例年70万人を越す観客が集まる東京湾大華火祭の救護所3ヶ所には、木挽町医院の協力を得て会員及び職員15名が出動し、速やかに救護活動を行った。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域では産業医同士の情報交換も活発に行われ、当医師会が主催した講演会と実地研修会には併せて453名もの参加者があった。また、中央地域産業保健センター活動にも協力した。
     区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区内の国立がんセンター中央病院、聖路加国際病院のみならず、区外の東京都済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、慈恵医科大学附属病院等との連携も深めた。また、中央ブロック脳卒中医療連携学術講演会や糖尿病医療連携講演会等に参加して医療連携クリニカルパスにつき他地区医師会と協議する一方、各地域での診診連携クリニカルパス作成も模索した。
     地域医療の健全な遂行に寄与する為、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。

    5.社会保障医療に関する事項
     京橋・月島地域の民生児童委員と当医師会の懇談会を開催し、当医師会及び受託運営している「リハポート明石」、「京橋おとしより相談センター」の活動等を紹介すると共に、夫々の代表者計19名が今後の連携について協議した。
     健康福祉まつり2008においては、医師会活動をまとめたパンフレットを配布すると共に、区民に医師会活動の内容や医療・介護保険や訪問看護の仕組みにつき判り易く説明した。健康相談会では各科専門の会員による健康相談や禁煙の啓発等を行い、区民50名から相談があった。
     福祉関連事業として長年続けてきた福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業等に引き続き協力すると共に中央区地域自立支援協議会にも参加し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホーム及び高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」及びマイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行った。
     本年も141回開催された中央区介護認定審査会には、会員・職員14名が分担して出席し、4,157件の審査を適正に行うと共に、主治医研修会や、認知症への対応力の向上を図る為の研修会も開催し、開業医のみならず勤務医を対象として介護保険制度の更なる周知を図った。また、毎年1度開催しているケアマネージャーと主治医の懇談会も8回目を迎え、区内のケアマネージャー57名及び医科歯科会員41名を含む107名が参加、様々な課題につき協議した
     健康保険制度の適正な運用を図る為、毎月レセプト整備会を開催し、24名の委員が年間総数661,302枚(社保分397,021枚、国保分263,796枚、介護保険分485枚)にも及ぶレセプトにつき、病名記載漏れ等の不備をチェックした。管外保険講習会には会員及び職員の計56名が参加し、同制度への理解を深めると共に、ORCAサポートセンター長永島道夫氏の講演「レセプトオンライン請求に向けての準備」に傾聴した。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     医療情報関連の諸会議に積極的に参加すると共に、日常的にインターネットを活用し、幅広く医事衛生に関する調査研究を行った。即ち、拙速な診療報酬改定、医療制度改革、レセプトオンライン請求義務化や、突然の微量採血用穿刺器具問題、新型インフルエンザ等に関する情報を迅速・多面的に検討し、当会内情報ネットワークを通じて、適時、役員、会員、そして区民へ、適切な情報を提供した。
     また、レセプトオンライン請求義務化については講演会も開催し、医事衛生を底支えする当会員、職員の知識習得に努めた。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は22周年を迎え、佃と京橋の同診療所には延人数で241名の会員が出動して2,742名の住民へ対応し、初期救急医療としての責務を果たした。また、新型インフルエンザ対策やレセプトオンライン請求義務化への対応等に備え、区と慎重に協議を重ねた。

    8.会誌、出版等に関する事項
     例年同様、当会活動に関することはすべてオンラインで医師会サーバ等へ集約し、各種HPから対内対外向けに必要な案件を広報すると共に、これらのデジタルデータを活用して、理事会報告等を掲載した会報を14回、様々な最新情報を掲載した区医ニュースを12回、貴重な学術論文を中心に、会員活動、随筆、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載した中央区医師会雑誌22刊号を発刊した。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」は開設11年目を迎えた。全国的に人手不足が深刻化する中、予防訪問看護から看取りまで365日・24時間のサービス体制を堅持しつつ、ケアプラン作成の総数は735件、訪問看護回数総計は10,612回に及び、医師会員と共に区民への在宅サービスに大きく貢献した。

    10.介護老人保健施設等に関する事項
     区から受託運営している介護老人保健施設「リハポート明石」は開設5年目を迎えた。通算138回にも及ぶリハポート明石施設利用調整委員会での真剣な協議を通して、区民の利用状況や要望等をほぼ把握するに至り、区内外に新たな類似施設が出来るも、今年度の延べ入所者数は704名(ショートステイを含む)と前年度より微増し、施設内事故件数を対前年比20%減少した。また、「リハビリ等を通じた在宅復帰支援」という目標を達成すべく、従来の当施設利用者による評価に加え、第三者評価の専門組織により主要4項目につき厳格な実態調査を行い、79項目にも及ぶ改善点につき速やかな課題解決を図ると共に職員研修2回を実施した。こうした地道な努力が認められ、次年度以降も当会が同施設を受託運営することとなった。
     同じく区より受託運営している「京橋おとしより相談センター」を軸に、「月島おとしより相談センター」や「日本橋おとしより相談センター」とも良好な連携を図った。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     理事会を15回、総務会を63回開催し、夫々23名、8名の出席者が、当会に届いた2,578通の通知文書を踏まえ、216件、643件の案件を協議した。9つの委員会を新設して15の各担当部の横断的連携を促進すると共に、選挙規定検討委員会(のちに諸規定検討委員会へ改名)や新型インフルエンザ担当理事連絡会を開設した。後者では発生段階別危機管理体制を構築し、同疾患に関する講演会等への積極的参加を通じて正確な情報共有を促進図った。
     更に今後の更なる当会発展の布石として、「入会の薦め」を作成して当会HPから公開、新入会員へ活動参加を促す正式文書も作成した。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、安全な医療の推進を図ると共に、区民の要望によるかかりつけ医紹介を8件、他、苦情相談7件にも速やかに対応した。また、日本医師会医療安全推進者養成講座、中央区の医療安全講習会等にも積極的に参加した。」
     
    合同講演会や六師会等を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めた。また、2回開催された中央区保健医療福祉連絡協議会に日本橋医師会と共に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行った。更に当医師会推薦の中央区議会議員と懇談会を開催し、区行政全般につき活発な情報・意見交換を行った。恒例の創立記念式典に加え、 訪問看護ステーション開設10周年記念式典を開催し、関係各位に当会の活動を紹介し、幅広い公益活動に理解を求めた。
     会員の全員加入を原則としていた当会青色申告会及び同納税貯蓄組合を任意加入の独立した団体とし、同労働保険事務組合を解散した。医師会事務長を初めて公募し、新たな人材を採用した


     慶事として、中央区長表彰(衛生事業功労者)を武田宏君、葉田野雅夫君、環境大臣感謝状(中央区公害被害補償診療報酬等審査会委員)を松本章一君が受賞した。
     一方、不幸にして渡辺十四男君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     今年度新たにA会員9名、B会員9名、B2会員2名、合計20名の会員を迎え、総会員数259名を数える医師会となった。
     今年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。

平成21年度
  • 21年度は新型インフルエンザ(Flu)・パンデミック2009、そしてその真っ只中での歴史的な政権交代と、本会にとっても印象深い一年となった。
     北米に端を発した豚
    Fluは、政権末期の自民党によるお粗末な水際作戦や発熱外来、そして政権奪取の民主党による過剰な新型Fluワクチン統制など、医療の現場とは乖離した朝令暮改への対応に余計な労力・時間を割かれた。しかし、本会ではIT等を活用して会員同士は勿論、区保健所担当等とも連携し、隈部会長を本部長とする健康危機管理対策本部を速やかに発足、区内の定点・準定点や休日応急診療所等での新型Flu発生状況を逐次共有、マスクや迅速診断キットの確保等にも的確迅速に対応すると共に、肺炎球菌ワクチンや新型Fluワクチンの公費負担実現を強く区に要請し、これらを実現した。
     10月に受診者数がピークを迎えた佃休日応急診療所では、事前に体勢を強化して即応し得たが、急増する発熱患者への対応に加えて季節性Fluの予防接種、更には新型Flu予防接種の準備等で、会員各位の日常診療は危機的状況に陥った。これら過酷な現実を踏まえて、11月の国の新型Fluワクチンの小児への接種前倒し要請に対し、速やかに臨時理事会等を開催して協議、同20日の創立記念式典にて
    会員有志のワクチン持ち寄りによる集団接種を説明、本会の創立記念事業として同23日、全国に先駆けて小児無料集団接種を粛々と実施した。その後も同集団接種を2回、また、有志会員医療機関にて集団的個別接種も実施し、区民の要望に応えた。加えてこの一連の新型Flu騒動は、簡便なITを本会として普段使いしておく意義を再認識する貴重な場ともなった。
     ギリシャに端を発した財政危機はユーロ圏に激論をもたらしたが、国内では「税金の無駄使い根絶」を掲げた新政権による事業仕分けが衆目の的となった。しかし、自民党長期政権からの政治資金や沖縄基地など山積した諸問題に解決の目処は立たず、国民生活を担保する年金改革や国の根幹に関わる高齢者対策・少子化対策にも進展は殆ど見られなかった。勿論、小泉改革で加速した医療崩壊にも歯止めが掛っていない。こうした厳しい状況下、聖路加国際病院レジデントの地域医療研修を継続すると共に、全国初の国立がんセンター中央病院シニアレジデント緩和ケア研修における在宅医療研修をスタートし、会員有志の医療機関及び本会各事業所がボランティアでこれに参画した。
     子育て世代の増加が目立つ当区でも高齢化、殊に認知症への適切な対応は必要不可欠との観点から、認知症かかりつけ医養成を図ると共に、区に働き掛けて創刊した認知症かかりつけ医マップを区民及び関連部署等に幅広く配布するなど、次世代を担う区民、区職員並びに若手医師等の啓発に取り組んだ。
     2年目を迎えた特定健診も協会けんぽの被保険者等による”健診難民”を救済するには至らず、健診受診率の低下に伴う各種がん検診受診率の低下も大きな課題として残った。優れた医療も受診無くしては役に立たず、空理空論を弄ぶより実際に受診率を上げ、受診後の迅速的確な診断及び医療連携が肝要との信念に基づき、健康診査・がん検診の改善を粘り強く区に提言すると共に、精度を高める読影会のデジタル対応等も実現した。
     創設後5年の実績が評価され、再受託した介護老人保健施設“リハポート明石”では、昨年度に引き続き2度目の内部調査を実施、一層のサービス改善に努めた。また、利用者のニーズに答え、土曜日の入退所等にも対応すると共に、独居老人の入居保証人やクリーニング等の案件を見直して利便性を高めた。全国的にも稀な高い在宅看取り率を維持する訪問看護ステーションあかしでも、更なる看護技術向上を目指し、認定看護師資格取得の道を開いた。
     以上、本会の公益事業の一端を紹介したが、その他、本会の幅広い各事業を在住者・在勤者の健康を守りつつ将来に亘り継続発展出来るよう、二次保健医療圏(港区,中央区,千代田区,台東区,文京区)を支える9地区医師会からなる中央ブロックの幹事医師会として、医療連携や公益法人制度改革等をテーマに様々な講演会・研究会を開催する等、地道な自己研鑽にも努めた。今後の中央区医師会活動の更なる充実を期し、平成21年度の事業を総括し報告する。
      
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学、医療を研鑽し、良質な医療を在住者・在勤者へ提供する為、臨床画像検討会を11回、本会独自の学術講演会を4回、学術集談会を1回開催した。更に国立がんセンター中央病院にて専門医による学術講演会を1回開催し、同院木曜読影会及びメディカルカンファレンスにも参加する一方、聖路加国際病院の外部委員会にも参加して、同院との合同カンファレンスを4回共催した。以上により日医生涯教育制度の受講申告率はほぼ100%に達し、本会員の生涯学習に大きく寄与した。更に、平成22年度からの日医生涯教育制度実施要項改正への速やかな対応を検討した。
     一方、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加すると共に、国立がんセンター中央病院のレジデント在宅医療研修プログラムにも協力し、がんセンターレジデント在宅医療打合せ会を2回開催した。

    2.公衆衛生に関する事項
     区と協力し、特定健康診査を40〜75歳の区民4,990名に、75歳以上の区民2,517名に高齢者健康診査を実施した。また、次年度へ向けて内容の検討・帳票の見直し等を行った。更に各種がん検診(肺、胃、大腸、子宮、乳腺、前立腺)、眼科検診及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。胸部疾患検診・胃がん検診では国立がんセンター中央病院及び聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々29回、32回開催し、デジタル画像での読影を可能とする等、より一層の診断精度向上及び業務効率化に努めた。
     定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に実施し、延接種人数は9,059名に達した。また、新型インフルエンザ(Flu)に備えて、同ワクチン及び肺炎球菌ワクチンの公費負担を区議会・区行政に強く要望、大流行の直前にこれらを実現した。また、大流行に際しては、医師会ホームページ(HP)開設以来初めて臨時トップページに変更し、在住者・在勤者に新型Fluの最新情報等を提供し続けた。
     東京都医師会の委託による在宅難病患者訪問診療事業を、聖路加国際病院神経科の専門医、区障害者福祉課及び区保健センターの協力を得て、区内2名の患者に対し年4回の訪問及びケース検討会を実施し、難病患者を支援した。
     更に中央区保健医療福祉計画推進委員会及び同食育専門部会に参加するとともに、中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所感染症の診査に関する協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の12の認可保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、3つの高等学校に延べ92名の会員が園医、学校医として協力し、例年同様に学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断を、認可保育園では週1回の定期健康診断を行なった。例年同様の各種予防接種を9,059名に実施すると共に、新型Fluに対しては後述のように速やかに対応した。各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者、教師を対象にした児童、生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     11月には国の小児への新型Fluワクチン接種時期前倒しの要請を踏まえ、都内他地区に先駆けて集団接種を行った。即ち、区内関係各所と調整して臨時理事会を開始し集団接種実施を決定、創立記念式典等でその経緯及び方針を会員へ説明して協力を呼び掛け、有志会員提供の新型Fluワクチンを用いて11月23日に中央区保健所にて本会主催の小児無料集団接種を実施、会員15名、職員11名の協力を得て幼児(区民)319名に無事接種した。尚、取材に来所したマスコミ(計8社から20名)に対しては、まずスライドで趣旨説明をした後、被接種者及び保護者の了解を得ての取材を許可した。
     引き続き教育委員会等にも呼び掛け、東京都から供給の集団接種用新型Fluワクチンを用いて、12月13日に会員30名、職員29名の協力を得て小学校低学年迄の区民741名に、年明けの1月10日と会員19名、職員14名の協力を得て同集団接種を実施、高校生迄の区民624名に接種した。更に有志の会員医療機関にて集団的個別接種も実施し、区民の要望に応えた。

    4.地域医療に関する事項
     4月下旬の北米での豚Flu発生のニュースを受けて直ちに情報収集を開始、それらを踏まえて迅速に区保健所と協議、臨時理事会も開催して新型Flu対策行動計画及び診療所対応マニュアルを更新した。その後の世界的感染拡大に応じて刻々変化する国や東京都の渡航歴や発熱外来等の方針変更や、区内での流行状況等についても、本会の各HP及びML等を駆使して速やかに会員及び区民・在勤者へ役立つ情報提供を行い、中央区感染症ネットワーク会議にも出席し、関係各署とも積極的に情報意見交換を行った。
     平成19年度にスタートした東京消防庁救急相談センター救急相談医には13回出務する一方、予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処する為、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加し、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医を見直した。また、例年70万人を越す観客が集まる東京湾大華火祭の救護所3ヶ所には、木挽町医院の協力を得て会員及び職員14名が出動し、速やかに救護活動を行った。
     中央区平日準夜間小児初期救急医療事業には当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、月島及び京橋の中央区病後児保育実施医療機関としても夫々協力し、地域の小児救急医療に対し貢献した。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域では産業医同士の情報交換も活発に行われ、当医師会が主催した講演会と実地研修会には併せて702名もの参加者があった。また、中央地域産業保健センター活動にも協力した。
     昨年度から始めた国立がんセンター中央病院との医療連携強化のための情報交換会を3回開催すると共に、区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区外の東京都済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、慈恵医科大学附属病院等との連携も深めた。また、中央ブロック脳卒中医療連携学術講演会や糖尿病医療連携講演会等に参加して医療連携クリニカルパスにつき他地区医師会と協議する一方、各地域での診診連携クリニカルパス作成も模索した。
     地域医療の健全な遂行に寄与する為、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。

    5.社会保障医療に関する事項
     京橋・月島地域の民生児童委員と当医師会の懇談会を開催し、当医師会及び受託運営している「リハポート明石」、「京橋おとしより相談センター」の活動等を紹介すると共に、夫々の代表者計20名が今後の連携について協議した。
     健康福祉まつり2009においては医師会活動を纏めたパンフレットを配布すると共に講演会を開催し、新型Flu・パンデミック2009について判り易く説明した。健康相談会では各科専門の会員による健康相談や禁煙の啓発等を行い、区民67名から相談があった。
     福祉関連事業として長年続けてきた福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業等に引き続き協力すると共に中央区地域自立支援協議会にも参加し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホーム及び高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」及びマイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行った。
     本年も140回開催された中央区介護認定審査会には、会員・職員14名が分担して出席し、4,199件の審査を適正に行った。主治医研修会を開催し、開業医のみならず勤務医へも介護保険制度の更なる周知を図ると共に、上述の国立がんセンター中央病院シニアレジデントの在宅医療研修を訪問看護ステーションあかし及び京橋おとしよりセンターでも実施し、次世代を担う医師の養成にも取り組んだ。一方、高齢化に伴い増加する認知症に対応する為、認知症対応力向上研修会も開催し、認知症かかりつけ医を養成し、在宅医療の充実に努めた。更に行政と協力し“認知症かかりつけ医マップ(初版)”を作成して区民・関連部署に配布し、認知症のより一層の啓蒙を図った。
     また、毎年1度開催しているケアマネージャーと主治医の懇談会も9回目を迎え、区内のケアマネージャー52名及び医科歯科会員37、中央区役所8名を含む97名が参加、様々な課題につき協議した
     健康保険制度の適正な運用を図る為、毎月レセプト整備会を開催し、24名の委員が年間総数
    410,993枚(社保分236,298枚、国保分173,810枚、介護保険分885枚)にも及ぶレセプトにつき病名記載漏れ等の不備をチェックし、年度末には平成22年度診療報酬改定についての講習会を開催した。第50回管外保険講習会には会員及び職員の計60名が参加し、同制度への理解を深めると共に、日本橋医師会の櫻井秀也先生よる故武見太郎先生についての特別講演を拝聴した。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     新型Fluの発生及びその大流行に際して、持てるツールを総動員して日々、調査研究を継続した。その他、医療情報関連の諸会議に積極的に参加すると共に、日常的にインターネットを活用し、幅広く医事衛生に関する調査研究を行った。即ち、拙速な診療報酬改定、医療制度改革、公益法人制度改革、電子レセプト請求義務化等に関する情報を迅速・多面的に検討し、本会内情報ネットワークを通じて、適時、役員、会員、そして区民へ、適切な情報を提供した。
     また、電子レセプト請求義務化については講演会も開催し、医事衛生を底支えする本会員、職員の知識習得に努めた。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は23周年を迎え、佃と京橋の同診療所には延人数で会員257名及び職員608名が出動して4,311名の住民へ対応(うち32名を転送)し、初期救急医療としての責務を果たす一方、両診療所のセキュリティを更に強化し、サイトコントロール等によるより堅実なネットワーク保全を図った。
     殊に夏休みに各地へ拡散した新型Fluの影響を受けて、同診療所受診者数は9月中旬から急増、10月19日には109名とピークを迎えた。しかし、上記の如く朝令暮改の国や都の通知にも迅速に対応、小児無料集団接種早期実施の鎮静効果もあって、例年同様、粛々と休日応急診療事業を無事に遂行し、年明けの2月にはほぼ平年並みの受診者数となった。

    8.会誌、出版等に関する事項
     例年同様、本会活動に関することはすべてオンラインで医師会サーバ等へ集約し、各種HPから対内対外向けに必要な案件を広報すると共に、これらのデジタルデータを活用して、理事会報告等を掲載した会報を19回、様々な最新情報を掲載した区医ニュースを12回、貴重な学術論文を中心に、会員活動、随筆、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載した中央区医師会雑誌23刊号を発刊した。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」は開設12年目を迎えた。全国的に人手不足が深刻化する中、予防訪問看護から看取りまで365日・24時間のサービス体制を堅持しつつ、ケアプラン作成の総数は643件、訪問看護回数総計は10,857回、看取り件数は50件(うち在宅看取り件数が30回)に達し、医師会員と共に区民への在宅サービスに大きく貢献した。この激務の中、職員の更なる看護技術と知識向上の為、認定看護師制度の資格取得への道も試行した。

    10.介護老人保健施設等に関する事項
     区から受託運営している介護老人保健施設「リハポート明石」も当初の委託期間5年を経て、適切な運営が区議会でも高く評価され、本会が引き続き受託運営することとなった。そこで、従来からのリハポート明石施設利用調整委員会を計22回開催し、運営等につき真剣に協議すると共に、今年度も内部調査を実施し、昨年度の初回調査からの改善度を評価した。区民のニーズに応えて土曜日の入退所を実現すると共に、入所保証人やクリーニング等を見直し独居の区民への利便性も高めた。その結果、月平均の入退所者数58名、今年度延べ入所者数793名(ショートステイを含む)と増加、施設内事故件数は150件と減少し、入所者の55%が自宅復帰を果たした。
     同じく区より受託運営している「京橋おとしより相談センター」では、5,006件の相談を受けつつプラン1,290件を作成する一方、「月島おとしより相談センター」や「日本橋おとしより相談センター」とも良好な連携を図った。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     6月初旬の区内発生を受けて新型Flu担当理事連絡会を廃止、新型Flu関連の議案は全て理事会で協議することとなり、本会に届いた2,790通の通知文書を踏まえ、本年度は理事23名で理事会を20回(臨時理事会7回、臨時理事懇談会1回を含む)開催して188件の議案を、総務8名で総務会を50回(臨時総務会3回を含む)開催し685件の議案を慎重に協議した。
     一方、合同講演会や六師会等を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めると共に、2回開催された中央区保健医療福祉連絡協議会に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行った。更に当医師会推薦の中央区議会議員と懇談会を開催し、新型Fluのみならず区行政全般につき活発な情報・意見交換を行った。
     第62回創立記念式典では、創立記念事業として新型Fluワクチン小児無料集団接種を実施することへの理解を求め、年明けの新年賀詞交歓会では、3回の同集団接種を無事完了した旨を参加者に報告した。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、安全な医療の推進を図ると共に、苦情相談15件にも速やかに対応したが、21年度は区民からかかりつけ医紹介の要望は無かったまた、ドクターアドバイザーシステム研修会を開催して児童虐待への認識を高め、日本医師会医療安全推進者養成講座、中央区の医療安全講習会等にも積極的に参加した。
     中央ブロックの幹事医師会として新型Flu講演会を開催すると共に、中央ブロック正副会長会議、医療と医政研究会、医療経済講演会、広報担当理事連絡会、特定健診担当懇談会、脳卒中連絡協議会、肝炎ネットワーク事業講演会、糖尿病医療連携セミナー、公益法人制度改革講習会等を幅広く開催した。また、東京都医師会会長選挙に先立ち、立会い演説会を開催した。
     慶事として瑞宝小綬章を細田和成君、文部科学大臣表彰(学校医)および東京国税局長表彰を前田立雄君、医療功労賞都道府県賞を
    菊岡豊二君、中央区特別功労者表彰を鈴木肇君、中央区各種功労者(教育功労者)を松本章一君、京橋消防署長表彰(救急業務協力者)を隈部時雄君、東京都医師会学校医会表彰(特別功労者)を前田立雄君、東京都医師会学校医会表彰(功労者)を新井豊彦君、東京都医師会学校医会表彰(永年勤続20年)を松本章一君、中央区社会福祉事業功労者表彰を小森信政君、東京都社会福祉協議会会長感謝状を中央区医師会が受賞した。
     一方、不幸にして吉岡隆君、鈴木肇君、千秋淳雄君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     今年度新たにA会員8名、B会員5名、B2会員4名、功労会員1名、合計18名の会員を迎え、総会員数260名を数える医師会となった。
     今年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。

平成22年度
  • 本会の前身である京橋区医会の創立100周年を迎える本年度、「理事・委員各位に”和の精神”を如何なく発揮して戴くことこそ執行部の重大な責務」という市川新会長のもと、公益法人制度改革への対応を本格化した。まず執行部たる理事会の月2回開催を試み、夫々の冒頭にて会計事務所及び各事業所から月次報告を受けることにより、本会の事業面及び会計面への理解を深める一方、ガバナンス面については新たに2つの諮問委員会を発足、その答申をもって理事会での協議を更に深める一助とした。こうした体制のもと、同改革に関する講演会を相次ぎ開催、秋には税理士事務所を公募、理事会で応募4社を慎重審議した上で顧問税理士事務所を選定し、年明けからは同事務所作成の基本検討書案の内容につき周知を図り、年度末の理事会及び総会にて同案への承認を得るに至った。
     この間、従来の公益活動たる幅広い医師会活動も粛々と継続展開し、パンデミック2009を経て更に深まった区関係各位との信頼は、中央区保健医療福祉連絡協議会の成果となって結実した。即ち、健診検診の受診期間見直し、乳がん・子宮がん検診の拡充、子宮頸がん予防ワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン・Hibワクチンの接種費用の全額助成、在宅療養支援としての在宅医療後方支援ベットの確保等を実現した。 また、パンデミック再来に備えて区民公開講座を、自殺予防の為のうつ診療充実強化研修事業等も開催した。年度末、新たな両ワクチン同時接種後の乳幼児死亡との衝撃的な報道があったが、これに伴う国の一時的接種見合わせ及び接種再開についても迅速的確に対応した。
     歴史的な政権交代により発足した鳩山内閣が懸案の普天間米軍基地代替施設移設問題で失脚、6月に発足した菅内閣も参院選大敗によるねじれ国会の中、尖閣諸島中国漁船衝突事件、ロシア大統領北方領土訪問等、厳しい外圧に晒され、施政方針演説では医療崩壊を決定付けかねぬ環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に言及、政権与党の歩みは混迷を極めた。一方、夏にはWHO(世界保健機関)からパンデミック終息宣言がなされるも、我が国では記録的な酷暑で熱中症による死亡が急増し、冬にはニュージーランド大地震に続いて3月11日、未曾有の大震災・大津波が東日本を襲い、続発した福島第1原発事故はパンデミック2009にも匹敵する衝撃を世界に与えた。
     本会は震災直後に臨時理事会及び拡大災害救急委員会を開催、輪番停電による医療機器停止や製造工場損壊による医薬品欠乏等に速やかに対処すると共に、原発の風評被害に直撃された福島県はいわき市医師会とのトップ電話会談を踏まえて都医中央ブロックの9医師会に呼び掛け、ITを活用して直ちに中央ブロック JMAT(Japan Medical Association Disaster Medical Team)を組織、同地避難所の医療支援を行うと共に、都心の風評一掃に向けて市民公開講座を企画した。
     大きな節目を迎えた今、今後の中央区医師会活動の更なる充実発展を期し、平成22年度の事業を総括し報告する。
      
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学、医療を研鑽し、良質な医療を在住者・在勤者へ提供する為、臨床画像検討会を12回、本会独自の学術講演会を4回開催し、かかりつけ医による早期診断による自殺予防を推進すべく、東京都うつ診療充実強化研修事業に協力してうつ診療充実強化事業研修会を2回開催した。更に国立がん研究センター中央病院にて同院木曜読影会及びメディカルカンファレンスにも参加する一方、聖路加国際病院の外部委員会にも参加して、同院との合同カンファレンスを4回共催した。引き続き本会として会員の積極的な生涯学習に寄与すべく、本年度から始まった日本医師会生涯教育カリキュラム2009に基づく新たな日医生涯教育制度にも速やかに対応した。
     一方、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加すると共に、2年目を迎えた国立がん研究センター中央病院のレジデント在宅医療研修プログラムも発展的に継続した。

    2.公衆衛生に関する事項
     区と協力し、特定健康診査を40〜75歳の区民5,061名に、高齢者健康診査を75歳以上の区民2,557名に実施した。また、新型インフルエンザの経過についての区民公開講座も開催し、主として65歳以上の区民に高齢者インフルエンザ予防接種及び高齢者等肺炎球菌予防接種を実施し、夫々延8,502名及び1,169名に接種した。更に、各種がん検診(肺・胃・大腸・子宮・乳腺・前立腺)、眼科検診及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。胸部疾患検診・胃がん検診では国立がん研究センター中央病院及び聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々30回、35回開催し、デジタル画像での読影体制を見直しを図りつつ、より一層の診断精度向上及び業務効率化に努めた。
     更に健康中央21及び同食育専門部会に参加するとともに、中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所感染症の診査に関する協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の14の認可保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、3つの高等学校に延べ94名の会員が園医、学校医として協力し、例年同様に学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断を、認可保育園では週1回の定期健康診断を行なった。例年同様の各種予防接種を13,850名に実施した。各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者・教師を対象にした児童・生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     小児に対する定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に実施し、延接種人数は13,850名に達した。本年度からは新たに中学生(区民)を対象とした子宮頚がんワクチン接種費用の全額公費負担を開始すると共に、次年度からの同ワクチンの対象を高校生(区民)へ拡大及び小児用肺炎球菌ワクチン・Hibワクチンの接種費用の全額助成も実現した。
     中央区病児・病後児保育事業連絡会、中央区園医会、中央区学校保健会、中央ブロック5歳児健診講習会、中央区平日準夜間小児初期救急診療事業、教育長と教育委員会と学校医との懇談会、中央区健康優良努力児童審査会、小児保健事業関係者懇談会、中央区小児科医療連携の会等に参加し、校医親和会の活動も行った。

    4.地域医療に関する事項
     予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処する為、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加し、医師会の電話・FAX連絡網及び救護所への出動医を見直した。そこへ勃発した年度末の東日本大震災に際しては、直ちに臨時理事会及び拡大災害救急委員会を開催して協議し、輪番停電による医療機器停止や製造工場損壊による医薬品欠乏等に対する実態調査を踏まえて聖路加国際病院から専門医を講師に迎えて緊急講演会を開催した。また、原発の風評被害に直撃された福島県いわき市医師会との会長電話会談を踏まえて都医中央ブロックの9医師会に呼び掛け、ITを活用して直ちに中央ブロック JMATを組織、同地避難所の医療支援を実現すると共に、都心の風評一掃に向けて国際医療福祉大学及び自衛隊中央病院から放射線リスクや危機管理の専門家を招いて、日本医学会総会がキャンセルされた東京フォーラムにて市民公開講座を企画した。
     従来、東京都の休日・全夜間診療事業への参画医療機関に一任してきた東京消防庁救急相談センターの救急相談医は、本年度から本会で幅広く支えることとし、まず理事及び災害救急部委員が交替で計12回出務した。また、例年70万人を越す観客が集まる東京湾大華火祭の救護所3ヶ所には、木挽町医院の協力を得て会員及び職員15名が出動し、速やかに救護活動を行なった。
     中央区平日準夜間小児初期救急診療事業には当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、月島及び京橋の中央区病後児保育実施医療機関としても夫々協力し、地域の小児救急医療に対し貢献した。また、在宅医療の現場から要望が強かった在宅医療後方支援ベットを、木挽町医院、三楽病院、昭和大学付属豊洲病院へ夫々1床ずつ計3ベットを確保した。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域での産業医活動の実態調査を踏まえ、産業医会を開催して活発な情報交換を行う一方、中央地域産業保健センター活動にも協力した。また、本会企画の産業医実地研修会は前日の東日本大震災の余震が続く中、次年度への順延を決定し、参加予定者へ速やかに周知した。
     3年目を迎えた国立がん研究センター中央病院との医療連携強化の為の情報交換会に参加すると共に、区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区外の東京都済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院等との連携も深めた。
     地域医療の健全な遂行に寄与する為、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。

    5. 社会保障医療に関する事項
     恒例となった当区の健康福祉まつりでは、座談会「中央区のワクチン接種」を開催して多様化した同接種事業を判り易く区民へ紹介すると共に禁煙の啓発活動も行い、また、健康相談会では各科専門の会員が区民74名の相談に丁寧に対応した。
     京橋・月島地域の民生児童委員10名を本会館へ招いて懇談会を開催し、同委員と関連する本会の各事業を担当理事から紹介、忌憚の無い質疑応答を通じてお互いの理解を深めた。
     福祉関連事業として長年続けてきた福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業等に引き続き協力すると共に中央区地域自立支援協議会にも参加し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホーム及び高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」及びマイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行なった。
     東京都医師会の委託による在宅難病患者訪問診療事業を、聖路加国際病院神経科の専門医、区障害者福祉課、訪問看護ステーションあかし及び区保健センターの協力を得て、区内2名の患者に対し年4回の訪問及びケース検討会を実施し、難病患者を支援した。
     本区からも協力要請があった東京都在宅医療相互研修事業に協力し、中央区保健所にて中央区医師会在宅医療推進シンポジウムを開催、区内関係者107名が参加した。
     本年も143回開催された中央区介護認定審査会には、会員・職員15名が分担して出席し、4,517件の審査を適正に行なった。主治医意見書研修会を開催し、開業医のみならず勤務医へも介護保険制度の更なる周知を図ると共に、上述の国立がん研究センター中央病院シニアレジデントの在宅医療研修を訪問看護ステーションあかし、リハポート明石及び京橋おとしより
    相談センター(総会後訂正)でも実施し、次世代を担う医師の養成にも取り組んだ。更に行政と協力し“認知症かかりつけ医マップ(初版)”を引き続き区民・関連部署へ配布し、認知症のより一層の啓蒙を図った。
     また、毎年1度開催しているケアマネージャーと主治医の懇談会も10回目を迎え、区内のケアマネージャー36名及び医科歯科会員40名、中央区役所8名を含む84名が参加、様々な課題につき協議した
     健康保険制度の適正な運用を図る為、本年度の診療報酬改定に関する保険講習会を開催すると共に、毎月初めにはレセプト整備会を開催した。電子レセプト請求義務化により紙レセプト提出枚数は激減し、本年度は9名の委員で年間総数90,016枚(社保分46,802枚、国保分42,102枚、介護保険分1,112枚)のレセプトにつき病名記載漏れ等の不備をチェックした。また、第51回管外保険講習会には会員及び職員の計54名が参加した。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     区の感染症危機管理ネットワーク会議等に参加すると共に、日常的にインターネットを活用し、幅広く医事衛生に関する調査研究を行なった。ことに本年は公益法人制度改革や放射線被曝等に関する情報を迅速・多面的に検討し、ITを駆使して関係各位へ適切な情報を提供した。また、日医初級パソコンセミナーを活用してパソコン勉強会を開催すると共に、理事会の更なるIT化を目指し、携帯ITツールの導入に向けて慎重に検討を進めた。
     京橋区医会創立100周年の記念マップを作成し、新年賀詞交歓会で来賓・会員へ配布すると共に、選挙規定等検討委員会の答申を受けて会員名簿の全面改訂への準備を進めた。
     日本医師会医療情報システム協議会のシンポジウムでは、本会のIT化への取り組みを発表し、引き続き同協議会参加者を対象に開催した有志のオフ会では、全国各地から参集した会員・職員等86名と情報意見交換を行なった。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は23周年を迎え、佃と京橋の同診療所には延人数で会員250名及び職員551名が出動して3,753名の住民へ対応(うち32名を転送)し、初期救急医療としての責務を果たした。「こどもの病気の診かた」をテーマに休日応急診療所職員勉強会を開催すると共に、京橋薬剤師会との合同協議会を開催し、同診療所の採用薬剤を見直した。

    8.会誌、出版等に関する事項
     例年同様、本会活動に関することはすべてオンラインで医師会サーバ等へ集約し、各種HPから対内対外向けに必要な案件を広報すると共に、これらのデジタルデータを活用して、理事会報告等を掲載した会報を23回、様々な最新情報を掲載した区医ニュースを12回、貴重な学術論文を中心に、会員活動、随筆、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載した中央区医師会雑誌24刊号を発刊した。尚、会報、区医ニュース及びFAX通知の配布に関するアンケート調査を実施し、通知媒体の在り方を見直した。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」は開設13年目を迎え、諸規則に関する職員向けの説明会を開催した上、懸案となっていた就業規則等諸規則及び労使協定を労働基準監督署へ提出した。
     全国的に人手不足が深刻化する中、予防訪問看護から看取りまで365日・24時間のサービス体制を堅持しつつ、ケアプラン作成の総数は560件、訪問看護回数総計は11,495回、看取り件数は41件(うち在宅看取り件数が20回)に達し、医師会員と共に区民への在宅サービスに大きく貢献する一方、中央区の在宅療養費支援訪問看護指導モデル事業にも協力した。また、同ステーションにも認定看護師制度の資格取得者が誕生し、同ステーションの看護知識技術面のみならず、最も重要な医療安全面の更なる向上に期待が高まった。

    10.介護老人保健施設等に関する事項
     区から介護老人保健施設「リハポート明石」を受託運営して7年目を迎え、区内のケアマネージャーを対象に実施したアンケート調査結果等を踏まえてリハポート明石施設利用調整委員会を計22回開催する等、より良い施設運営につき真剣に取り組んだ。その結果、入所者数824名(ショートステイを含む)と増 加、施設内事故件数は119件と大幅に減少し、入所者の55%が自宅復帰を果たした。
     同じく区より受託運営している「京橋おとしより相談センター」では、5,404件の相談を受けつつプラン1,360件を作成する一方、「月島おとしより相談センター」や「日本橋おとしより相談センター」とも良好な連携を図った。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     本会に届いた2,642通の通知文書を踏まえ、本年度は理事23名で理事会を23回及び臨時理事会2回開催して260件の議案を、総務7名で総務会を43回(臨時総務会11回を含む)開催し535件の議案を慎重に協議した。また、区が関連する再開発事業についても、本会が関わるべき案件については総務で慎重に調査研究した上で理事会に諮り、よりオープンな協議を試みた。更に歴代会長と総務との顧問会では、公益法人制度改革及び東日本大震災への対応につき貴重な示唆を得た。
     一方、日本橋医師会との合同理事会(3回)や合同講演会、六師会等を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めると共に、年3回開催の中央区保健医療福祉計画推進委員会及び年2回開催の中央区保健医療福祉連絡協議会に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行なった。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、医療安全講習会を2回開催する等、安全な医療の推進を図ると共に、苦情相談15件にも速やかに対応した。
     会館管理委員会を4回開催し、まず快適安全な業務環境整備の為、本会館内部の改修工事を実施、次いで水漏れ補修を併せ、ことに外壁等の落下防止を目的に会館外部の改修工事を実施した。その結果、東日本大震災による被害を最小限に留めることが出来た。
     公益法人制度改革への対応を本格化すべくまず執行部たる理事会の月2回開催を提案、夫々の冒頭にて会計事務所及び各事業所から月次報告を受けることにより、本会の事業面及び会計面への理解を深める一方、ガバナンス面については選挙規程等検討委員会及び公益法人制度改革検討委員会を新設し、随時、会長諮問への答申を求め、理事会での協議を更に深めた。こうした体制のもと、同改革に関する講演会を4回開催し、秋には税理士事務所を公募、2回の理事会で応募4社を慎重審議した上で中村CO(コンサルティングオフィス)を選定し、年明けには総務連絡会、諮問委員会、理事会、そして臨時理事会を兼ねた一般会員への説明会を立て続けに開催して中村COから基本検討書案の内容につき説明を受け、年度末の理事会及び総会にて同案への承認を得るに至った。
     慶事として、東京都医師会学校医会表彰(功労者)を岡添龍介君、東京都税務功労者主税局長表彰を前田立雄君、東京都教育委員会表彰(健康づくり功労)を松本章一君・原弘子君、中央区公共事務精励者表彰を菊岡豊二君、中央区衛生事業功労者表彰を栗原正典君、臨港消防署長感謝状を社団法人中央区医師会が受賞した。
     一方、不幸にして菊岡豊二君、矢田由美子君、清水溥文君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     本年度新たにA会員6名、B会員4名、B2会員2名、功労会員2名、特別会員1名、合計15名の会員を迎え、総会員数250名を数える医師会となった。
     本年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。
 
平成23年度
  • 巻頭言
     世界的不況が長引く中、東日本大震災及び福島原発事故は、我が国だけでなく全世界に大きな衝撃を与えた。ドイツやスイスは直ちに脱原発へ大きく舵を切ったが、国内原発54基中53基が次々と停止した我が国では、今夏誕生した野田総理率いるドジョウ内閣の下、事故原因も究明されぬ侭、神話復活への不透明な動きが始まった。こうした泥臭い手法は、TPP参加や消費税増税等でも遺憾なく発揮され、国政混乱が更に泥沼化する中、橋下元府知事が率いる大阪維新の会が耳目を集めた。
     本会は年度初頭、速やかに近隣5地区医師会と共に市民公開講座を開催し、被災地支援に介護職員6名を派遣した。年度末には震度7の首都直下地震予測発表に対し、直ちに本医師会館の耐震性や本会の防災減災対応の根本的見直しに着手し、薬剤師会等との意思疎通も図った。
     本会が営々と担ってきた様々な医師会活動においては、本区の新たな任意予防接種事業(Hib及び小児用肺炎球菌)及び都の新たな精神疾患早期発見早期対応研修事業・地域自殺対策緊急強化基金事業等へ積極的に協力し、区から受託の介護老人保健施設の施設長の中途退職に際しても、速やかにバックアップ体制を構築して新施設長を選任した。
     公益法人制度改革においては、地域部会毎の協議を踏まえて6月理事会及び総会で認定申請への段取りを承認、定款改定諮問委員会等の協議を経て9月理事会で会員説明会資料を承認した。更に2回の会員説明会を経て執行部が11月臨時総会へ上程した役員再任を含む理事会・総会決議事項が全て承認された。2月には東京都公益認定等審議会にて本会の移行認定が承認され、3月21日に公益社団法人への移行認定書を受領した。
     新年度からの公益社団法人中央区医師会の充実発展を期し、平成23年度の事業を総括し報告する。
      
  • 1.医学の振興及び医学教育に関する事項
     日進月歩の医学、医療を研鑽し、良質な医療を在住者・在勤者へ提供する為、臨床画像検討会を12回、本会独自の学術講演会を6回開催し、かかりつけ医による早期診断による自殺予防を推進すべく、東京都うつ診療充実強化研修事業に協力して地域自殺対策緊急強化基金事業 メンタル関連症例検討会を2回開催した。更に国立がん研究センター中央病院にてメディカルカンファレンスにも参加する一方、聖路加国際病院の外部委員会にも参加して、同院との合同カンファレンスを4回共催した。引き続き本会として会員の積極的な生涯学習に寄与すべく、日本医師会生涯教育カリキュラム2009に基づく新たな日医生涯教育制度にも速やかに対応した。
     一方、聖路加国際病院の新臨床研修医制度にも協力医療機関として参加すると共に、3年目を迎えた国立がん研究センター中央病院のレジデント在宅医療研修プログラムも発展的に継続した。

    2.公衆衛生に関する事項
     区と協力し、特定健康診査を40〜75歳の区民5,110名に、高齢者健康診査を75歳以上の区民2,731に実施した。また、主として65歳以上の区民に高齢者インフルエンザ予防接種及び高齢者等肺炎球菌予防接種を実施し、夫々延べ8,299名及び963名に接種した。更に、各種がん検診(肺・胃・大腸・子宮・乳腺・前立腺)、眼科検診及び肝炎ウイルス検査、骨塩定量検査を実施し、区民の健康維持に貢献した。胸部疾患検診・胃がん検診では国立がん研究センター中央病院及び聖路加国際病院の各専門医の協力を得て読影会を夫々30回、32回開催し、より一層の診断精度向上及び業務効率化に努めた。
     更に健康中央21及び同食育専門部会に参加するとともに、中央区公害健康被害認定審査会、中央区公害健康被害補償診療報酬等審査会、中央区大気汚染障害者認定審査会及び中央区保健所感染症の診査に関する協議会にも毎月出席し、積極的に発言した。

    3.学校保健に関する事項
     保育園児、幼稚園児、児童、生徒の心身ともに健やかなる成長、発達を見届ける為に、区内の15の認可保育園、11の幼稚園、11の小学校、3つの中学校、3つの高等学校に延べ95名の会員が園医、学校医として協力し、例年同様に学校と幼稚園では年7〜8回の健康診断を、認可保育園では週1回の定期健康診断を行なった。各学校において年に2〜3回開催される学校保健委員会では、校医による保護者・教師を対象にした児童・生徒の保健に関する諸問題についての講演、説明会を積極的に行い、将来を担う子供達への健康を維持するべく努めた。
     小児に対する定期及び各種予防接種事業も会員各位の協力を得て順調に実施し、延接種人数は24,168名に達した。
     中央区病児・病後児保育事業連絡会、中央区園医会、中央区学校保健会、中央ブロック5歳児健診講習会、中央区平日準夜間小児初期救急診療事業、教育長と教育委員会と学校医との懇談会、中央区健康優良努力児童審査会、小児保健事業関係者懇談会、中央区小児科医療連携の会等に参加し、校医親和会の活動も行った。

    4.地域医療に関する事項
     予測できない大規模災害及び局所的災害に迅速且つ適切に対処する為、区の防災会議や各種防災訓練等にも積極的に参加した。昨年度末の東日本大震災による福島原発事故に対しては、都心の風評被害を最小限に留めるべく、都医中央ブロックの9医師会で速やかに連携し、国際医療福祉大学及び自衛隊中央病院から放射線リスクや危機管理の専門家を招いて、東京フォーラムにて市民公開講座「放射線被ばくの今とこれから」を開催した。また、都の要請に応じて気仙沼の特別養護老人ホームへ本会介護職員を派遣した。

     東京消防庁救急相談センターの救急相談医として理事及び災害救急部委員が交替で計8回出務した。
     中央区平日準夜間小児初期救急診療事業には当医師会の小児科専門医3名が聖路加国際病院へ出向いて診療にあたり、月島及び京橋の中央区病後児保育実施医療機関としても夫々協力し、地域の小児救急医療に対し貢献した。また、木挽町医院、三楽病院、昭和大学付属豊洲病院に夫々1床ずつ計3ベット確保した在宅医療後方支援ベットを、ニーズに答えて速やかに有効活用した。
     昼夜間人口比が高く在勤者の健康管理も重要な当地域での産業医活動の実態調査を踏まえ、産業医会を開催して活発な情報交換を行う一方、自殺対策基本法による中央区の自殺対策協議会にも参加し、中央地域産業保健センター活動にも協力した。また、東日本震災で延期となった実地研修会を開催し、31名の医師が出席した。
     4年目を迎えた国立がん研究センター中央病院との医療連携強化の為の情報交換会に参加すると共に、区境を越えての受診者が多い地域特性を勘案し、区外の東京都済生会中央病院、東京臨海病院、順天堂大学医学部附属順天堂医院、昭和大学附属豊洲病院、日本医科大学付属病院、駿河台日本大学病院、東京慈恵会医科大学附属病院等との連携も深めた。
     地域医療の健全な遂行に寄与する為、裁判所民事調停委員として毎月東京地方裁判所及び簡易裁判所へ夫々出席した。

    5. 社会保障医療に関する事項
     恒例となった当区の健康福祉まつりでは、理事による本会活動紹介の2演題に加えて、職員による講演「転ばぬ先の知恵〜家庭での転倒・転落を防ぐために」を実施すると共に、健康相談会では各科専門の会員が区民72名の相談に丁寧に対応した。
     京橋・月島地域の民生児童委員13名を本会館へ招いて懇談会を開催し、同委員と関連する本会の各事業を担当理事から紹介、忌憚の無い質疑応答を通じてお互いの理解を深めた。
     福祉関連事業として長年続けてきた福祉センター(健診)事業、水泳教室参加者の健康診断、区民スポーツの日等における参加者の各種健康診断、健康相談事業等に引き続き協力すると共に中央区地域自立支援協議会にも参加し、公益法人としての責務を果した。また、区立特別養護老人ホーム及び高齢者在宅サービスセンター「マイホームはるみ」及びマイホーム新川」への保健・医療協力も継続して行なった。
     東京都医師会の委託による在宅難病患者訪問診療事業を、聖路加国際病院神経科の専門医、区障害者福祉課、訪問看護ステーションあかし及び区保健センターの協力を得て、区内2名の患者に対し年4回の訪問及びケース検討会を実施し、難病患者を支援した。
     本年も主治医意見書研修会を開催すると共に、141回開催された中央区介護認定審査会には、会員・職員15名が分担して出席し、4,719件の審査を適正に行なった。国立がん研究センター中央病院シニアレジデントの在宅医療研修を、訪問看護ステーションあかし、リハポート明石及び京橋おとしより相談センターでも実施し、次世代を担う医師の養成にも取り組んだ。更に行政と協力し“認知症かかりつけ医マップ(初版)”を引き続き区民・関連部署へ配布し、認知症のより一層の啓蒙を図った。
     また、毎年1度開催しているケアマネージャーと主治医の懇談会も11回目を迎え、区内のケアマネージャー42名及び医科歯科会員40名、中央区役所8名を含む90名が参加、様々な課題につき協議した
     健康保険制度の適正な運用を図る為、本年度の診療報酬改定に関する保険講習会を開催すると共に、毎月初めにはレセプト整備会を開催した。電子レセプト請求義務化により紙レセプト提出枚数は激減し、本年度は9名の委員で年間総数58,356枚(社保分29,807枚、国保分27,191枚、介護保険分1,358枚)のレセプトにつき病名記載漏れ等の不備をチェックした。また、第52回管外保険講習会には会員及び職員の計59名が参加した。

    6.医事衛生の調査研究に関する事項
     幅広く医事衛生に関する調査研究を行なうと共に、中央区健康危機管理対策関係機関連絡会議等に参加し、危機管理MLも再編した。役員携帯端末を導入して理事会の更なるIT化を目指し、携帯ITツールの導入に向けて慎重に検討を進めると共に、選挙規定等検討委員会の答申を受けて会員名簿を全面改訂した。また、都医の第24回「医療とITシンポジウム」にて本会のIT活用事例として、新型Flu2009及び東日本大震災への具体的対応を発表した。
     日本医師会医療情報システム協議会に引き続き都内会員有志と開催した有志のオフ会には、本会役員5名も参加し、全国各地から参集した会員・職員等84名と活発な情報意見交換を行なった。

    7.休日応急診療所に関する事項
     区から委託された休日応急診療所事業は24周年を迎え、佃と京橋の同診療所には延人数で会員248名及び職員549名が出動して3,854名の住民へ対応(うち48名を転送)し、初期救急医療としての責務を果たした。京橋薬剤師会との合同協議会を開催し、同診療所の採用薬剤見直しや防災減災等につき協議した。

    8.会誌、出版等に関する事項
     例年同様、本会活動に関することはすべてオンラインで医師会サーバ等へ集約し、各種HPから対内対外向けに必要な案件を広報すると共に、これらのデジタルデータを活用して、理事会報告等を掲載した会報を24回、様々な最新情報を掲載した区医ニュースを12回、貴重な学術論文を中心に、会員活動、随筆、医師会活動の写真集、新入会員の名簿等を収載した中央区医師会雑誌25刊号を発刊した。
     かかりつけ医マップの新年度版作製に向けて、初めて区内薬剤師会所属の薬局も掲載する為に、4師会で協議を重ねた。

    9.訪問看護ステーションに関する事項
     自主公益事業である「訪問看護ステーションあかし」は開設14年目を迎えた。全国的に人手不足が深刻化する中、予防訪問看護から看取りまで365日・24時間のサービス体制を堅持しつつ、ケアプラン作成の総数は310件、訪問看護回数総計は11,696回、看取り件数は46件(うち在宅看取り件数が27回)に達し、医師会員と共に区民への在宅サービスに大きく貢献する一方、中央区の在宅療養費支援訪問看護指導事業にも協力した。

    10.介護老人保健施設等に関する事項
     区から介護老人保健施設リハポート明石を受託運営して7年目を迎えた。施設利用調整委員会を年間23回開催したほか、新たに区・医師会・施設の三者連絡会を年44回定期的に開催し、区民のために役立つ施設づくりをめざして、真剣に取り組んだ。利用状況については年度末に発生した感染症の影響もあって、対前年比若干の微減となった。
     同じく区より受託運営している「京橋おとしより相談センター」 では、3908件の相談を受けつつ介護予防給付ケアプラン1157件を作成する一方、 区内他の相談センターとも協力しながら地域に出向いての講座を開催したりと周知活動等の事業を展開した。

    11.その他本会の目的達成に必要な事項
     本会に届いた1,747通の通知文書を踏まえ、本年度は理事23名で理事会を23回及び臨時理事会1回開催して201件の議案を、総務8名で総務会を38回(臨時総務会8回を含む)開催し417件の議案を慎重に協議した。また、2月理事会では初めて都医執行部との意見交換会を開催、都心の医療や防災の特殊性につき理解を求めた。
     日本橋医師会との合同理事会(2回)や合同講演会、六師会等を通じて、日本橋医師会や区内の歯科医師会、薬剤師会とも連携を深めると共に、年3回開催の中央区保健医療福祉計画推進委員会及び年2回開催の中央区保健医療福祉連絡協議会に出席し、区民の健康を守る専門的立場から積極的に提言し、区行政各担当者と忌憚の無い協議を行なった。
     例年同様、より良質な医療の実践として日医診療情報提供の指針に基づき、医療安全講習会を2回開催する等、安全な医療の推進を図ると共に、苦情相談5件にも速やかに対応した。
     公益法人制度改革へ対応すべく、5月に9地域部会を夫々開催、6月理事会で公益認定へ進むと決議、6月総会で認定申請の為の段取りが承認された。7月には選挙規定等検討委員会及び公益法人制度改革検討委員会を定款改定諮問委員会に再編し、更に公益目的事業やガバナンス等を更に詰めて、9月理事会で「理事会総会決議事項」、「定款変更案/諸規程制定案」及び「公益目的事業の実施計画」を承認して顧問会へ説明した。10月開催の2回の会員説明会を経て、11月の臨時総会にて、「定款変更案の停止条件付き決議に関する件」、「関連規程の停止条件付き決議に関する件」、「移行に伴う役員再任に関する件」及び「公益社団法人への移行認定申請に関する件」の全てが承認された。以上により2月の東京都公益認定等審議会にて本会の移行認定が承認され、新年度から公益社団法人に移行することが確定し、直ちに移行登記手続きに入ると共に3月21日に公益社団法人への移行認定書を受領した。
     首都直下地震に備えて緊急諮問委員会を創設し、本会館の構造図及び目視による一次診断を実施し、正規の耐震診断に向けて準備を進めると共に、防災減災対策の見直しに着手した。
     慶事として、日本医師会優功賞を隈部時雄君、東京消防庁消防行政協力章を宮ア舜賢君、石松伸一君、中央区防災功労者表彰を宮ア舜賢君、中央区社会福祉事業功労者表彰を新井豊彦君、税務功労者東京都税事務所長感謝状を市川尚一君、京橋納税貯蓄組合連合会会長感謝状を松本章一君が受賞した。
     一方、不幸にして武田 宏君、長田 昌明君が逝去された事は真に痛恨の極みで、謹んで哀悼の意を表するとともにご冥福をお祈りする。
     本年度新たにA会員7名、B会員9名、功労会員3名、合計19名の会員を迎え、総会員数259名を数える医師会となった。
     本年度、全会員が一致団結、協力し、公益法人として、以下の各事業を精力的に展開した。